August 28, 2004

[BOOK] 頭脳警察/須田諭一

(河出書房新社) 2500円+税
書籍「頭脳警察」
戦い続ける者達の貴重な証言

 1980年代前半、ポストパンク、ニューウェーヴと呼ばれるシーンの嵐が吹き荒れている頃にロックを聴き始めた僕にとって、頭脳警察という名前のバンドは伝説という幻の存在だった。一応再発されていたセカンドアルバムも、僕の住んでた田舎町では手に入るはずもなく、ただ一度だけラジオで聴いた「銃をとれ!」のあまりに荒削りで暴力的な衝撃だけが、ずっと長いあいだ感覚の記憶として残っていた。
 だから1990年に頭脳警察が突如として復活した時は驚喜したものだ。70年代の伝説のバンドを目の前で体験できる! 急いでライブのチケットを買った。バンド編成を見たら、ギターが僕の好きなグルーヴァーズの藤井一彦だったので二度驚いた。初めて観た頭脳警察は、想像以上に激しく過激で「こりゃ、すごいな」と完全に打ちのめされてしまった。旧譜がCDで再発されたので、すぐに全部買い毎日聴いていたのだが、そのうちに頭脳警察に対するイメージが少しずつ変化していくのを感じたのだ。

Continue reading "[BOOK] 頭脳警察/須田諭一"

| | Comments (3) | TrackBack (0)

August 24, 2004

[BOOK] 結婚するって本当ですか?/枡野浩一・むらやまじゅん・八二一

(朝日新聞社)857円+税
書籍「結婚するって本当ですか?」
結婚前の友達にあげるべき最高のプレゼント(その友達が本当に大切な人なら)

 独身の僕は買ったことないけど、『ゼクシィ』という雑誌の中吊り広告を見る度にいつも不思議な気分になる。人間そう何度も結婚するもんじゃないだろうに、ブライダル・マガジンなんていうものが毎月毎月、それもおそらくかなりの部数売れているってことがまず驚きだが、この内容がなかなかすごい。結納の段取りとか流行のウェディングドレスはこれ!といった内容はまあ理解できなくもないが、披露宴BGMはこれがいいだの、受付・控え室はこうやって演出しようだの、いやあ、結婚式ってあげるの大変だね〜と僕なんかは逆に結婚したくなくなるような余計なハウ・トゥが満載なのだ。でも、結婚を間近に控えたカップルは、こういうのが楽しくてしょうがないんだろうなあ、と、いろいろ考えされられるところの多い『ゼクシィ』の中吊り広告なのだ。
 まあそれはさておき、数年前、短歌歌人の枡野浩一さんが結婚すると聞いた時は、ええっ!と驚いた。いくらなんでも枡野さんが『ゼクシィ』を買って浮かれている姿までは想像できないが、だれよりも孤独のイメージが強かった枡野さんと「結婚」という単語はなかなか結びつかなかったのだ。

Continue reading "[BOOK] 結婚するって本当ですか?/枡野浩一・むらやまじゅん・八二一"

| | Comments (14) | TrackBack (0)

July 27, 2004

[Book] 男道コーチ屋稼業/掟ポルシェ

(マガジン・ファイブ)1560円+税
書籍「男道コーチ屋稼業」
くだらないことをやるために生まれてきた

 「説教番長・どなりつけハンター」に続く掟ポルシェ氏の2冊目の単行本が、サブカル出版社マガジンファイブよりリリースされた。
 全裸に貝殻ビキニ・・・本人は武田久美子のつもりらしいが、明らかに別物。しかし、インパクトは武田以上だ。そういえば初めてロマンポルシェの1st CD(『人生の兄貴分』)を聴いた時も、あまりの素晴らしさに感激し、直ぐさまMP3にリッピングしてかたっぱしから友人にメールで送りつけたが(苦情殺到)、この表紙はその時の衝撃を久しぶりに思い起こさせてくれた。この写真を見て「なにこの人?キモい」とか「バッカじゃないの」ぐらいにしか思わない人は、あっち側(メインストリーム)の世界の人なんで「せかチュー」や「ハリポタ」でも読んでて下さい。

Continue reading "[Book] 男道コーチ屋稼業/掟ポルシェ"

| | Comments (89) | TrackBack (0)

[Book] 0円ハウス (写真集)/坂口恭平

 (リトル・モア) 3300円+税
書籍「0円ハウス」 
鳥が巣を作るように

 隅田川や新宿中央公園に行くと、ブルーシートで覆われた多くの簡易ハウスを見つけることができるが、単純ながらも様々な趣向を凝らした一つ一つの家は見ていて非常に面白い。雑然とした家もあれば、きれいに整頓された家もある。ちょっとした飾り物が置いてあったり、花壇があったり、犬や猫を飼っていたり・・・住んでいる人の人柄までもが伝わってくる。もっとも眺めている方はのんきだが、住んでいる方は大変だろう。世間の目は必ずしも好意的ではないし、心ない人の嫌がらせや暴力もあるだろう。そして行政から常に撤去される危険にある。「不法占拠」というのが撤去する側のもっともらしい言い分だが、果たして本当にそうだろうか? そもそも土地が誰かの所有物だと考えているのは人間だけだ。
 本書は、名古屋、大阪、東京に点在する簡易住居(0円ハウス)の写真を集めたユニークな写真集だ。どの家も非常に工夫が凝らされていて、外敵や撤去の不安さえなければ、とても住みやすそうに見える。現場ではあまりジロジロ見るのも失礼だが、写真でならじっくりと見ることができるのが嬉しい。
 本書の帯に「鳥が巣を作るように、人間も家を建てることができる。」と書いてあるが、その言葉には人間だって鳥のようにどこにでも自由に巣(家)を作りたいという思いが読みとれる。かつてインディアンは、白人が土地を売れと迫った時に、「母なる大地をどうして売ることなどができるでしょうか」と言った。何十年もローンを組まないと買えないような立派な家よりも、これら0円ハウスの方が遙かに自由に見えるのは、僕だけではないだろう。

| | Comments (22) | TrackBack (0)

July 01, 2004

[Comic] 奇的 KITEKI/大久保亜夜子

(青林工藝舎) 1381円+税
書籍「奇的 KITEKI」
人間記録媒体である私

 私達は生きていく中で、様々なものを見たり聞いたり感じたり、それを考えたり記憶したり、さらには表現したり感情を変化させたりと、コンピューターで言えば膨大な量の計算を行っている。こうした行為は普段あまり意識せずに行っていることだが、ひとたび「ところで自分って一体何なんだろう?」という疑問を持ってしまうと、この自然な流れに狂いが生じることがある。自分がわからなくなると、当然他人もうまく理解できないし、世界もよくわからないといった具合に歯車(今で言えばビット)がズレてしまうのだ。思春期の頃はこうした狂いをよく感じたものだが、最近は日常生活に追われて自分を深く見つめるような時間もなかったなあと、この不思議なマンガ『奇的』を読んで実感させられた。

Continue reading "[Comic] 奇的 KITEKI/大久保亜夜子"

| | Comments (43) | TrackBack (0)

[Comic] L.L.COOL J太郎/杉作J太郎

 〜帰ってきたワイルドターキーメン〜
(マガジン・ファイブ)1,680円(税込)
書籍「L.L.COOL J太郎」 
男も女も惚れる、Jさん待望の単行本

 「待望の作品」という言葉を今ほど使いたい時はない。なぜなら、1999年の『ヤボテンとマシュマロ』以来、実に5年ぶりとなる杉作J太郎の漫画作品がリリースされたのだから。
 杉作J太郎と言えば、タレント、役者、文筆家、プロレス解説者など多才なマルチタレントというイメージが一般的かもしれないし、そもそも杉作J太郎という個性そのものが一つのジャンル(根本敬的に言えば「大陸」)として存在していると言えるのだが、僕のようにある程度サブカルを囓ったことのある人間にとって、杉作J太郎は雑誌「ガロ」で、やるせなくも美しい青春漫画を連載していた偉大なる漫画家としての認識が強いのではないか。

Continue reading "[Comic] L.L.COOL J太郎/杉作J太郎"

| | Comments (6796) | TrackBack (0)

June 09, 2004

[BOOK] FICTION!/石丸元章

 (扶桑社)1333円+税
FICTION.jpg
我々は「現実」と「虚構」が混線した世界に生きている

 日本においてゴンゾ(ならず者)ライターを名乗っている人が何人いるかは知らないが、間違いなくその第一人者にして代表者でもある石丸元章の、前作『フラッシュバック・ダイアリー』以来約1年半ぶりの単行本がリリースされた。自身のドラッグ体験をもとにした『SPEED』をはじめ、世間的にはノンフィクション作家と認識されている石丸氏だが、彼の著書を一冊でも読めばわかるように、そこに描かれているユーモラスかつデンジャラス、スピード感とナンセンスに溢れる文章からは、現実と非現実の区別はほとんどつかない。例えば『SPEED』の冒頭シーンで、シャブをギンギンにきめた石丸氏が、当時の重要任務であった宇宙警察のパトロール中に、これまたパトロール中の日本のお巡りさんに出くわす所なんかは、現実と妄想が見事に混線していて、こちらとしてはひとまず大いに笑うしかない。この「虚実ないまぜ」こそが石丸作品の大きな魅力であるのだが、今作は、タイトルをズバリ「FICTION!」とし、氏初めてのフィクション、ショートショート作品集となっている。

Continue reading "[BOOK] FICTION!/石丸元章"

| | Comments (6) | TrackBack (0)

June 06, 2004

[BOOK] 「非国民」手帖/歪・鵠

 (情報センター出版局)1400円+税
Hikokumin.jpg
暴力的な圧政に抵抗しうるのは暴力的な言論だけ

 『噂の眞相』(以下、噂眞)の休刊後、名物の一行情報や人気連載コラムなどが次々と単行本化されているが、ある意味で噂眞を最も噂眞たらしめていたコラム「撃(げき)」がこのほど単行本化された。連載中は、巻末の「編集長日誌」ほどには目立たない感の「撃」であったが、「歪」(ひずみ。ゆがみも可)「鵠」(くぐい)という謎の人物2人によって1993年から休刊号まで続けられたこのコラムが体現していたものこそ、編集長・岡留安則が最もこだわっていた「反権力」の姿に他ならない(一時期、僕は、筆者の「歪」「鵠」とは、岡留氏の変名かと思っていたほどだ)。噂眞編集部による本書のまえがきに書かれた「撃」の位置付けこそが、このコラムの重要性を語っている。つまり、「『噂の眞相』の批判精神を凝縮した、いわば「社説」のような役割を果たしていた」と。

Continue reading "[BOOK] 「非国民」手帖/歪・鵠"

| | Comments (6) | TrackBack (0)

June 04, 2004

[COMIC] 新・中学生日記3/Q.B.B.

 (青林工藝舎)980円+税
Chugaku3.jpg
人生で一番ダサイ季節・中学生。
シリーズ最新刊はついに恋愛章に突入…か?

 ヘボヘボのマンガを書かせたらこの人の右に出る者がないQ.B.B.こと久住昌之&久住卓也が描く「新・中学生日記」の<いよいよ恥ずかしい>第3巻。文春漫画賞を取った第一期「中学生日記」は男子校が舞台だったが、第2期である「新・中学生日記」の方は共学になっているのがポイント。つまり、異性のことで頭がいっぱいなのだが、そのほとんどは妄想という、非常に居心地の悪い状態の男子女子の滑稽な様子が実に巧みに描かれている。

Continue reading "[COMIC] 新・中学生日記3/Q.B.B."

| | Comments (324) | TrackBack (0)

June 03, 2004

[BOOK] 淋しいのはお前だけじゃな/枡野浩一(短歌・文)/オオキトモユキ(絵)

 (晶文社)1400+税
Sabishiinowa.jpg
それならば イブにはダウンジャケットと
鳥撃ち帽をぬいで祈りを

 この短歌を読んで、「そういえば、初期の枡野さんって髪も長くて、いつも鳥撃ち帽をかぶってたなぁ」と8年程前のことを思い出した。当時、ロフトプラスワンでは、ライター養成独立夜間学校「ライターズ・デン」というイベントが月イチで開催されていたのだが、そこに枡野さんはお客として来ていたし、時にはゲストとして壇上でしゃべったりもしていた。枡野さんは、音楽ライターをやりながら、これまでとは全く違ったタイプの歌人(強いて言うなら「サブカル歌人」?)としてデビューしたばかりだった。95年に角川短歌賞に応募し、審査員5名中4名の票を集めたのになぜか落選したという経歴によって、本人が望むと望まないにかかわらず、枡野浩一は権威(歌壇)を否定する反逆者として世に登場したのだ。そして、背が高く線の細い枡野さんが鳥撃ち帽を目深にかぶった姿は、彼の書く短歌と同様、ナイーブで孤独なイメージを放っていた。

Continue reading "[BOOK] 淋しいのはお前だけじゃな/枡野浩一(短歌・文)/オオキトモユキ(絵)"

| | Comments (8) | TrackBack (0)

その他のカテゴリー

Days Event 書籍・雑誌 音楽